今から約1200年程の昔のことです。平安時代の女流家人”小野小町”は、父である出羽の郡司小野良実を探し訪ねるために、京の都から奧州へと旅に出ました。しかし小町は、なかなか思うように父を訪ねあてることは出来ませんでした。そのうち旅の疲れも重なって、とうとう吾妻越えの途中で、病にかかり倒れてしまいました。日々を重ねても病気の具合は一向によくなりません。父の行方もわからぬまま、小町は毎日憂鬱とした日々を過ごしていました。そんなある夜、小町は薬師如来の夢をみて、お告げを受けました。霊泉を探し、そこで湯治をせよというのです。小町は薬師如来の夢に従うことにしました。そして夢のお告げどうり、あちらこちら訪ね歩いて、とうとう霊泉を発見しました。3週間の湯浴みによりようやく病をなおすことができました。そして再び父を探す旅を始めました。その後、小町は鬼面川のほとりで無事に父に巡り合えることができたということです。時に小野小町18歳でありました。小野小町は、霊泉の発見に関して、このような歌を残しています。”訪ね行く 出で湯は何処に あるならん 心あらばや 葦よ教えそ−−−小野小町”温泉街の近くには、彼女に因む名所が点在し、いにしえの浪漫を今に伝えています。なお、小野小町が開湯したとされる湯は”尼の湯”と呼ばれ、現在は共同浴場として使用されています。小野小町にちなんでか、この湯で髪をなでると、美しい黒髪になるということです。 |