時代は、はるか平安の頃まで逆のぼります。平安時代も末期の頃、東国に平朝臣維茂(たいらのあそんこれもち)という、とても強い武将がいました。維茂は信州の戸隠山に住む鬼女を退治するために、都からはるばる信濃国へやってきました。そして、紅葉狩りをする美しい女に化けた鬼女を壮絶な格闘の末、神授の太刀で見事退治しました。(謡曲や歌舞伎で有名な『紅葉狩』です。)維茂は、いったん帰路につきましたが、丸子にいる柏木の鬼の話を思い出し、このままその鬼も退治してくれようと、丸子の地にやってきました。しかし、この柏木の鬼というのもなかなか手強い相手で、またもや激しい戦いを強いられました。やっとのことで鬼を退治した維茂は、切り落とした首を地中に埋めました。さすがの維茂も激しい戦いのため、体中に沢山の傷を負い、すっかり疲労困憊してしまいました。傷ついた体を引きずりながら、山の中をさまよっていると、湯煙と共にこんこんと湯が湧きだしている泉があるのをみつけました。維茂は、この泉の湯で疲れきった体をいやそうと、毎日この湯に浸かって湯治を行いました。それからというもの傷ついた維茂の体は、日を追うごとにみるみる回復していき、気がつくと前にも増して、強靱な金剛のような強い体になっていました。維茂は、この湯はたいそう霊験あらたかな湯に違いないと思い、その場所に寺を建立することにしました。そしてその寺を金剛山霊泉寺と名付け、この不思議な泉を守ったということです。この湯は、寺湯として利用され、寺湯は現在共同浴場となっているということです。

温泉データ
泉質 含石膏性苦味泉
温度 35〜45度
効能 中風、高血圧、胃腸、神経痛、傷

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